リターンを想定すれば、将来に得られる金額を想定できます。リスクを想定すれば、将来に得られる金額がどの程度の幅の範囲になるか想定できます。そこでリスクとリターンから将来推計しているグラフがあるのですが、リスクが多いと50%の人は想定したリターンよりはるかに下のリターンしか得られないという推計があります。売買タイミングが悪くて、ということではなく、保持し続けた想定でもです。なんでこんなことになるのでしょうか。
モンテカルロ法によるリスクに応じた将来リターン
明治安田アセットマネジメントのモンテカルロ法によるシミュレーション
明治安田アセットマネジメントのHPにリスクによるリターンの差がありました。
リスクが異なると運用成果はどう変わるのか?
(同意する を押さないと内容が見えませんが、同意しても不都合はないかと。)
年率5%で100万円を10年間運用すれば、162万円(100万×1.05の10乗)になるはずですが、リスクが10%の商品だと平均的な場合で155万円に、リスクが20%だと平均的な場合で136万円に下がると説明されています。
リスク10%の商品の年率が5%のはずなのになぜ下がるのでしょうか?
ここでは言及されていませんが、平均額は年率5%の162万円ですが、稼ぐ人がいっぱい稼いで平均を引き上げるので、50%目の人は平均よりも少ない額しか得られないって計算になっています。
その他のモンテカルロ法によるシミュレーション
東北投信さんというブログでも似た内容が紹介されていました。
【モンテカルロ】過半数の人の運用結果は目標複利に達しない可能性
20年間、毎月1万円をリスク18%の商品で積立投資を行うと、リターン6%で計算上は441万円になるはずが、中央値(50%目)が408万円になるという結果です。
エクセルによるリスクとリターン
モンテカルロ法の結果の確認計算
モンテカルロ法はランダムに何度か試してみてどうなるか計算してみた結果です。
たまたまそういうデータだったのでしょうか?エクセルで計算してみました。
上に載せた明治安田~と同じ条件として計算した例です。
グラフを重ねましたが、モンテカルロ法の結果とエクセルの計算値はほぼ一致しています。(googleスプレッドシートだと図が表示されない!)
モンテカルロ法でも試行回数を増やせば、計算値と変わらない結果となります。
実際のデータでの確認
先ほどの計算シートで、投資期間26年、年率リターン1.366%とするとリスク18%で中央値の人のリターンは95%と元本割れすることとなります。
ちなみに下の方に確認計算の表をつけましたが、リターンの算術平均はリスクによらず142%(101.366%の26乗)です。
ここで実際のデータを見てみます。
これはある日経225インデックスファンドのリスク、年率リターンでした。
ファンドのリスクは月次リターンの標準偏差を年換算して求めています。
なので、26年分の月次リターン312個をランダムに312個とった場合のリターンを計算してみました。
5000回の計算した結果を500回分づつ10個に分けて平均値等を求めています。モンテカルロ法です。
10個のデータがさほどばらついていないのが分かるかと思います。

いいとこどりした訳ではないですよ!ランダムに最初に出てきた結果です!
なんと、平均が200%を超えています。中央値が平均リターンの142%に近いです。
中央値が142%になるような計算式の計算シートは次になります。
10%、30%、90%のリターンが計算結果とよく一致していますね。
ちなみにリスクが増えるほど、算術(相加)平均は上がりますが、相乗平均は142%で一定です。
どちらが正解なのでしょうか?

こちらが正解としても、下位30%のケースは元本割れの9割弱で、下位10%のケースは元本の半値以下という悲しい結果です。
リスクの算出方法の問題点
明治安田アセットマネジメントのモンテカルロ法は何か間違えたのでしょうか?
間違いというより、リスクの考え方の違いだと思います。
リスクが正規分布と仮定するか、対数正規分布と仮定するか、それ以外か?
上の実際のデータから中央値が平均リターンになるのが正解っぽいですが、どうでしょう?
実際のデータだと少しづつ上がる月が多く、ガクッと下がる月があります。それをランダムに抽出した結果でしかないのです。でも、実際はランダムではないのです。理論株価というのがあったとして、そこから乖離していっても元に戻る力が働くので、ランダムに上がったり下がったりではないようなのです。実データだとリターンが1より小さい(下がる月)があまり偏らずに出現しているようです。掛け算なんで出現順番は関係ないですが、出現の偏りは関係あります。実際はこんな単純な計算では出せないってことでしょう。

とりあえず、リスクが18%でリターンが1.4%ってのはヤバイってことかな。
おわりに
今回の内容は「だから何?」って感じる人が多かったかも。一応、ダウンロードはこちら。
マクロを組んでけっこう時間かけた割に、読みたい人がいなそうな。
んー、計算式をこねくりまわしても、将来の予想は難しいってことです。

実は私はこんな計算してるのが好きだったりします。。。
追記:野村アセットマネジメントの投信アシストでは、対数正規分布として扱っていました。このブログの実績データに近い方(リスクによらず相乗平均が一定)ですね。こっちの方が(各データを独立とみれば)数学的には正しく一般的かとは思います。でも、実際は前月や前々月のデータと独立はしていないので結果はだいたいのイメージとしてとらえるべきと思います。
コメント