山崎元さんと岩城みずほさんの開発した人生設計の基本公式という必要貯蓄率を計算する式があります。
計算するためにはいくつかの条件を設定する必要があるのですが、その設定を誤るとおかしな結果がでてきます。
どこが問題なのかの説明と、修正版を作成したのでエクセルファイルを公開します。
山崎元おすすめの必要貯蓄率の計算式の問題点
「必要貯蓄率」で検索すると計算式はすぐに見つかると思います。こちらが分かりやすいかな。
人生設計の基本公式と名付けていますが、基本というには検証すべき問題がいくつかあります。
問題点1:老後生活費率が貯蓄率を考慮している
「現在年収×老後生活費率」を老後に使えると思ったら大間違いです!「現在年収×老後生活費率×(1-必要貯蓄率)」が老後に使える費用です。貯蓄分を除いて考える必要があるのでご注意を。
問題点2:老後生活費率が現在の生活からのレベルダウンをイメージさせる
この式で試算した個人ブログの中には、現在と同等の生活をしたいからと、老後生活費率を100%にしている人がいます。
これだと現在と同じ出費(老後貯蓄を除く)ができることになって、教育費や住宅ローンなどの分も含んでしまいます。
例えば、老後に不要となる出費が年収の30%あるなら、現在と同等な生活で老後生活費率は70%になります。
問題点3:定年後から年金開始までのタイムラグを想定していない
現役年数を60歳の定年までにして、その後を老後年数にすると、貯蓄率を低めに見積もってしまいます。現役後はすぐに年金が受給できると想定しているからです。
タイムラグがある場合は、定年後から年金開始まで現役年収分を別に確保して現役年数を年金開始までとするか、年金を定年時までの繰り上げ受給として低めの年金額を入力するかです。
問題点4:貯蓄額ではなく貯蓄率なので、教育費などの変動に対応しにくい
子どもが小さい頃にここでの貯蓄率を上回る貯蓄を行い安心していたら、教育費がかかる頃に貯蓄率を下回り、老後資金が不足したなんてことに。貯蓄額(年収×貯蓄率×現役年数)も把握しておいた方がよいです。教育費がかかるまでに退職金で不足する貯蓄額を貯めてしまおうなどと計画できるから。
問題点5:現在の資産額によって老後生活費が増減する
計算上、現在の資産額を変えると老後生活費が変わってしまいます。
現在の資産額を増やすと必要貯蓄率は若干下がりますが、必要な老後資産額は増えます。老後生活費の算定に資産額が入っているからです。
式としての欠陥かと思いますが、そういうものとして使いましょう。

必要貯蓄率のエクセルでの計算と修正版
エクセルでの計算例を次に示します。
手取り年収560万円、老後生活費率70%、想定年金額240万円、現在資産額1000万円、現役年数15年、老後年数30年とすると、必要貯蓄率は17.7%になります。年間約100万円を老後のために貯めなきゃなので、けっこう大変ですね。老後は月27万円近く使えるので安心かも。
設定しにくい老後生活費率を老後に不要な年間支出としたものが下の表です。手取り年収×(1-老後生活費率)=老後に不要な年間支出 としています。
こちらの方が実態にあった数値を設定しやすいと思います。今より余裕がある老後にしたければ、ここの数値を低めにすればよいです。なお、こちらも構造的な式の問題点は改善していません。
教育費などが少なく老後に不要な年間支出が少ない時は必要貯蓄率が高くなり、教育費などが高い時は必要貯蓄率が低くなるので、なんとなくそれっぽいです。(が、式の構造に問題があるので、老後生活費も変動します。)
老後の年間生活費のエクセルでの計算
老後設計の基本公式として、貯蓄額から老後に使える生活費を計算する式もあります。
こちらについては、単純に用意できる老後資金を老後の年数で割ったものを毎年の生活費として年金に足しているだけです。
なんだか条件をいっぱい入力させたいようで、最終資金額ってのもあります。これは単純に予備費として残しておく金額なので、始めから保有資金額から差し引いておいてもよいです。
保有資金額は未年金期間が始まる段階の資金額です。通常は定年の段階かな。
想定余命には、年金を受け取る年数に、未年金年数を加えます。
働く年数は未年金年数と同じかそれより少なければ問題ないです。働く年数が未年金年数より長いと未年金期間に資金がショートする場合があります。

こちらは単純な式なので基本公式っぽいです。
おわりに
上の表のエクセルファイルはこちらからダウンロードできます。条件を変えていろいろと計算してみてください。計算式の間違いなど不具合があればコメントなどでお教えて頂けると助かります。
どちらの基本公式も老後年数を使いますが、老後年数を気にせず設定できるエクセルシートを作ったので近日中に公開します。
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